「新聞読んで知った」は、もうやめよう

オリンピック・パラリンピックの開催が東京で予定され、経済の面でも転換点になるかもしれない2020年になりました。

年頭にあたってさまざまに目指すところを思い描いている方も多いだろうと思いますが、僭越ながらわたしのほうからひとつ、経営者のみなさんにぜひ気にしてほしいことを述べさせてください。

それが、今月のコラムのタイトルです。

ITやデジタルのトレンドに関して、経営者の方々のアタマに何らかの「フラグ」が立つきっかけは、わたしが知る限りでは、ほぼ「新聞」であると理解しています。敢えてどことは申し上げませんが、新聞社までほぼ共通しています。

ほとんどの経営者が、○○新聞で記事を読んでから、社内の部下に「これ、うちではどうなんだ」と聞いています。

今年から、それはもうやめましょう、というご提案です。

実はITやデジタルに関して(おそらくほかの分野でも同じなのでしょうが)、メジャーな新聞に記事が載る時点では、その筋の人たちにとってその情報はすでに周知の事項です。もう少し踏み込んで言ってしまうと、「あー今頃その話が出てきたの」という感覚で見ています。

実際、多くの経営者がバイブルにしている○○新聞のIT関連記事は、その新聞社の傘下にある専門誌がすでに報じている内容を再編集して記事にしていることが、非常に多いのが実態です。そのため、すでに専門誌のほうを読んでいる人からすればなおさら、「記事使いまわしてるの?」という感じになるのです。

つまり、経営者の方々は先取りしているつもりかもしれませんが、実はまったく遅いということです。

考えてみれば当然のことかもしれません。そのデジタル技術についてすでに挑戦している組織があるから、すでにそれが顕著な傾向になっているから、大手の新聞がようやく取り上げるのですから。

ITの分野は、そのタイミングで考え始めているのでは、場合によっては周回以上の遅れになります。実行することについては早いのがよいとは限りませんが、考え始めることについては、早いほうが確実に有利です。

今年からは、新聞だけを「頼みの情報源」にするのはやめましょう。その代わり、社内の担当者に、専任のタスクとして情報収集をさせてください。情報収集した内容は経営者との間で頻繁に共有し、そのなかでトレンドや方法論をキャッチアップします。いわば、ミニ・シンクタンクです。

そのようにして、大衆が話題にする前に、社内ですでに話題になっているという状態を目指してください。

この取り組みがうまく軌道に乗れば、その会社の経営者は、○○新聞を見るにつけ、「もうそれは、検討を始めているよ」と反応するようになるでしょう。そんな会社を、ぜひ目指していただきたいと願っています。