最近、CDO(Chief Digital Officer)という役職が話題に上るのを見かけます。この役職を置く大手企業がいくつか出てきているそうです。
CDOは、わたしの認識が正しければ、IT 系の大手リサーチ会社である米ガートナーが提唱し始めた役職名で、簡単に言えば、企業においてビジネスのデジタル化を推進する責任をもつ経営幹部と位置づけれられています。
これに関連するところでは従来から CIO という役職があり、CIO が IT に関する領域の責任を持つとされていました。そこにまた、CDO なる役職名が登場し、何がどう異なるのか、きちんと理解しておく必要があるのか、自社に必要なのか、よくわからない経営者の方もいるのではないでしょうか。
結論から申し上げれば、他人との会話にお付き合いできる程度に知っておけば十分だと、わたしは思います。業界お得意の話題づくりに振り回されるのは、本質的ではありません。
一般的な説明においては、まず CIO は、企業が従来から管理してきたバックエンドの情報システムを中心に、その運営に責任を持つものとされています。かたや CDO は、顧客に向けたフロントエンドに注目し、デジタル化による顧客体験を提供する「(広義での)サービス」を提供するシステムを構成し、その運営に責任を持つというイメージで語られています。
ここからはわたしの個人的な見解ですが、CIO とは、Chief Information Officer の略であるのが一般的とされますが、同時に Chief Innovation Officer とも言えるとされていました。そして、CDO という言葉が出てくる以前においては、いま CDO が司るとされている領域の活動には、CIO が貢献することが期待されていました。
ところが、現実の CIO がそのようなイノベーティブな成果を実現するケースはほとんど見受けられませんでした。こと日本においては、CIO と呼ばれながら、例えば実は経営会議のメンバーではない等、情報システム部長と変わらないような職務権限であるケースも多かったように思われます。そもそも「CIO」という役職名が企業にそれほど広がらず、IT 関係の幹部を紹介する際にマスコミも苦し紛れに「実質的な CIO」などと称する例もよく見かけます。
CIO って結局は IT 部門の責任者なのね、という、本当はそんなはずではなかった認識が定着する一方で、やはりビジネスの本質的な領域への IT の浸食は止まりませんでした。新興企業を中心に、デジタル的な思考をベースとしたビジネス基盤で事業を展開するケースが後を絶ちません。おそらく今後、それが当たり前になるでしょう。
そうした中で出てきたのが、CDO です。根底には、従来型の情報システム整備の考え方と、デジタルビジネス推進の考え方は、同じにはできないという主張があります。この主張については、わたしが以前にブログで記したとおり、認識が確定しているわけではありません。
こうして考えてみると、要するに重要なことは、企業自身が、自社のデジタルの責任者にどのような活動で成果を挙げてもらうのかを明確にし、その役割と権限をその企業なりに定義することではないかと思います。それさえできていれば、CIO でも CDO でも、IT 責任者でも、それこそ CEO でも、名前など何でも構わないのではないでしょうか。
会社の基幹機能をどのようにカテゴライズし、幹部が会社のどのような基幹機能を担うのか。デジタルはそこにどう絡むのか。これを考えるほうが、より本質に近づくはずです。トレンディなことばを気にしすぎるのは、もうやめましょう。それでメディアに乗っかりたいのなら別ですが。