「ビジネスにITは不可欠」を行動で示す

先日、トヨタ自動車とスズキが業務提携の検討を開始すると発表しました。背景には、自動運転技術をはじめとする情報通信技術の自動車への取り込みへの課題がある、と報じられています。

自動車業界ではITがビジネスのコアの領域にまで浸食しつつあり、これを持たないとすでに戦えないという状況にある、ということを如実にうかがわせるニュースではないでしょうか。

ただしこれは、業界の中でも一定のプレゼンスと実績を持つスズキだから、トヨタ自動車というこの領域で先頭を走る企業との業務提携が実現できるとみるべきだと思います。すでに自動車業界においては、相当に魅力的な能力を持たないかぎり、この段階から慌ててもよいITパートナーと巡り合うことさえ至難でしょう。

こうした出来事は、ほかの業界でも起こり得ることです。それがつまり、「すでにビジネスにITは不可欠」と言われる現実とつながっているわけです。おそらくこれに同意しないビジネスリーダーは皆無だろうと思っています。

そうであるなら、自社のビジネス領域でITがコアに昇格してしまうよりも早く、ITをよく理解し取り込みを図るように活動するのが得策ではないでしょうか。

カギになるのは、「ITの目利きになる」こと。さらに、ITを自社に本気で取り込むか否かにかかわらず、技術の目利きができる人材を自社に備えること。これらが重要ではないかと思います。

まずは、勃興している技術トレンドを知ることが重要です。そのうえで、それらの技術を活用してどのようなビジネス活用が出てきているのかを知ります。トレンドを追い、それぞれの技術の本質を理解することで、「もしかすると、こういう流れも起きうるのではないか」 「こんなこともできるようになるのではないか」という発想が生まれるようになります。

こうした発想は、特に先進的ではない、ちょっとした業務に対してでも適用できることです。

たとえば最近、人工知能(AI)の発展が盛んに取り上げられています。聞くと、学習データを与えることでコンピュータが自動的にパターンを覚え、それに従って柔軟に判断して処理を実行してくれるといいます。そういえば、ウチに郵送されてくる請求書。取引先が多くてフォーマットが多種多様、入力するのに相当な工数を取られている。これって、AIがフォーマットを学習して必要な入力項目を覚えて、勝手に会計ソフトに取り込んでくれるとか、できないのかな…

こうした機能を実現するシステムは実はすでに登場しているのですが、要するに発想のネタは身近なところにあるはずなのです。それを考えようとするかどうかの問題なのです。

そうして湧いてきた発想が自社にとって競争力につながる重要な内容だと判断できれば、今度は「試す」活動を進めます。小さな試験環境をつくって、そこで実際に動かして検証してみるのです。この時点で、そうした技術を有する専門企業をリサーチすることになります。すぐにはうまく見つからないかもしれませんが、継続しているうちにそうした企業を見る目も養われていきます。

こうした動きがすでにできている企業と、具体的な行動を起こさなかったためにできていない企業。いざ技術のメガトレンドが顕著になった時にうまく波に乗れるのはどちらなのかは、言うまでもないことでしょう。