「最先端のデータ活用」を疑う

ここ最近、いわゆる ”GAFA” に対する風当たりが強くなってきています。大きな理由のひとつは、情報を寡占しすぎているということです。情報を渡す側であるユーザーの保護に対する意識が世間で高まり、例えば2020年に予定されている個人情報保護法の改正検討では、個人が企業に対して自らの個人データの利用停止を請求できる「利用停止権」の拡充が検討されているようです。

データの持ちすぎ、分析のやりすぎは、世間からネガティブに反応されるということが、カタチになって現れてきているということだと感じます。

日本の企業はGAFAに(皮相だけ)見習い、データは集めれば集めるほど良いと考えているように見受けられます。データ活用に先進的と言われる企業ほど、データの持ちすぎ、分析のやりすぎで先進的、というふうになってはいないでしょうか。

GAFAには、世界中のあらゆる情報を集めるというポリシーがあったのかもしれません。そして、集めたその情報をどう扱ったのかという行動が、世間の批判を集める結果につながっています。日本の企業はどうでしょうか。自信を持って顧客に誇れるポリシーのもとで、データを獲得しているのでしょうか。「あればそのうち使えるかもしれないから、とにかくなんでも集めとけ」というような方針は、ポリシーがないに等しいですし、ポリシーがなくてもできることです。

最近よく聞く「先進的な小売業」や「先端を行くマーケティングを実践する企業」などは、例えばこんな感じです。

まず利用者にアプリをスマホにダウンロードさせる。そのアプリを利用開始する前に、性別、年代、職業、居住地域、出身、学歴、趣味など、利用者には数々の個人情報を登録させる。そのアプリにはクーポンなどのお得な情報を掲載して、来店を促す。利用者が来店すると、店舗の入り口に仕掛けられたビーコンでアプリをインストールしているスマホを検知し、入店した段階で履歴の記録が開始される。店舗の棚にも同様にビーコンやカメラが仕掛けられ、手に取っただけのものまで逐次記録される。場合によっては、その場で即座におススメ商品を画面に映し出す。そして最終的に商品を購入すれば、当然に個人と紐づけられる形で購入履歴が記録される。店舗を離れると、アプリには来店のお礼と共に感想などのコメントを求めるメッセージがプッシュされる。それに書き込んで送信すると、その評価もまた記録される。

みなさんがこれを「すごい、進んでる」と感じるか、「気持ち悪い、居心地悪い」と感じるかは、それぞれでしょう。オトクなクーポン以外には関心のない人も、データを取られようが分析されようがどうでもよいと思う人も、なかにはいるかもしれません。

ところで、あなたにはなじみの店というものがあるでしょうか。特に勧誘されてもいないけれど、なんとなく足が向いてしまう。ある特定のモノやコトを購買するとしたら必ずその店に行く。そんな店があるでしょうか。

その店にいる、あなたの馴染みの店員は、あなたのことをどのくらい知っているでしょうか。仮にあなたのプライバシーを事細かに知っていたとしても、それはその店員から聞き出されるままにあなたが回答したことでしょうか。おそらくは、店員から聞かれたわけでもないのに、あなたが自ら進んで話をしたことではないでしょうか。相談するうちに自分のことを知ってもらいたくなって。

企業がデータ分析をする理由は、多くの場合、顧客をより惹きつけたいからであろうと思われます。一方で、どれだけデジタル化されようとも、客が行きたくなる店の特性はそれほど変わるものではないように、わたしは思います。そういう店の(暗黙の)データポリシーは、「情報はなんでも取る」ではないはずです。