新しい年を迎え、来る新年度の取り組みについて具体的に固めていくような時期である企業が、多いかもしれません。
ここ最近、”PoC”ということばがよく聞かれるようになっています。これは ”Proof of Concept” の略で、端的に言えば、新規の技術や仕組みの実証実験のことです。新たな取り組みを進める場合、まず小さく始めるのは基本ですが、それを最近では PoC と称しています。大手企業・ベンチャー企業といった大小を問わず、また業種業態を問わず、様々な PoC が行われているようです。
その要因として、IT関連の技術について気軽に実験できる環境が充実してきたという側面があるだろうと思います。
かつては、新しい技術が出てきたとしても、それを「試しに使う」というのは現実的ではありませんでした。気軽に試すことができなければ、新技術は敷居の高いものというイメージになりやすいものです。そのうち自らとは遠いものと認識するようになってしまうのも無理はなかったかもしれません。
ところが今では、相当にハードル低く、新しい技術を試すことができるようになっています。機械学習、ブロックチェーン、IoT、BI、認識技術 … かなりの種類の技術要素が、安価な料金か、場合によっては無料で、条件はあることが多いものの利用できるようになっています。最近では、量子コンピュータまでがクラウドで一般利用可能になるとのニュースも報じられました。
わたしは8年ほど前から「試す組織」の重要性を指摘してきました。「試す組織」とは、ビジネスを遂行する業務とは別に、企業が価値提供するうえで近い将来役立つと思われる概念や技術を探知し、他社より早く業務へ実用化する目的で活動する、企画チーム体制のことです。そのために、変化する外部環境や新技術の動向などを自ら学習し、トレンドやソリューションを見極める目利き力を養いながら、様々なことを「試す」取り組みを行います。
わたしが指摘し始めた頃に、こうした取り組みを実際に推進している日本の企業の事例は、一部の大企業における小規模なものだけでした。資金力がなせる業という側面も否めなかったと思います。しかし今では、中小規模でも技術にフォーカスを置く企業ではかなり自然に行われています。すでに、もの珍しい取り組みではないのです。
このような状況においてはすでに、いかに「技術」という食材をうまく選択し料理するのかというアイデア勝負の時代にあると言えます。技術そのものではなく、選び組み合わせるアイデアの妙で競っていく時代なのです。それにもかかわらず、アイデアを出すどころか、試すこともしない企業は、提供価値の特色も出せず競争力が低下するだけでしょう。
「試す」仕組みがまだない企業の経営者の方々におかれては、ぜひ今年は「試す組織」を真剣に考える年にしていただきたいと思います。