デジタルの素養を持つ人材不足が叫ばれるなか、学校教育でもそうした分野が拡充されてきているのは、周知のとおりです。
今年の4月から、高校では情報科目が必修化されると聞きました。情報科目自体は2003年度からあるそうですが、これまでは選択必修だったといいます。
最近の子供たちは小学校からプログラミングに触れ始め、中学高校と情報の取り扱いを継続的に学習し、大学では当然のようにコンピューターを使って課題をこなすようになりました。
2025年度からは大学入学共通テストに「情報」が追加され、入試でも学力が問われるそうです。サンプル問題が出ていましたので、実際に問題を解いてみたのですが、一見では数学の問題のように思えるものの、わたしが学生の頃にはありそうでなかった問題で、デジタル的に物事を考える「素養」を問うにはいい問題だなと感じました。
こうした環境で育った若者が、近い将来、企業に就職してくることになるわけです。こうなると、むしろ心配なのは、企業のほうだと思います。
データを見て物事をとらえ、手続きはデジタル環境でほとんどすべてをこなし、多くのやりとりをデジタル端末で済ませる生活が当たり前に思っている人材が、企業に就職した途端、タイムスリップしたかのような時代遅れの業務環境に直面する。業務上の判断をするにも、そもそも材料になるようなデータが社内に存在しない。ファクトに乏しいまま、上司や先輩は直感やら過去の経緯やら前例やらに基づいて判断を進めていく。そんなシナリオが目に浮かびます。
思い返してみれば、わたしが何十年前に就職した時にも、時代をさかのぼるようなことを体験したのを覚えています。わたしが就職した頃はインターネットが一般に広がる直前の時期でしたが、理系の大学研究室では電子メールがフツウに使われていました。電子メールでのやりとりなど、世間に名の知れた有名企業なら当然あるだろう、と思って就職したのです。ところが入社して新人研修中に先輩社員に聞いてみたところ、返ってきた答えは「いや、そんなのないですね」。就職先が通信会社だっただけに、驚愕したのを思い出します。
ちなみに、会社に電子メールが全社で導入されたのは、現場に配属された後の、その年度中のことでした。それでも、日本企業の中では早かったほうだと思います。
想像するに、わたしが当時受けたショックとは比較にならないような衝撃を、新卒の新入社員たちが就職先で受けるのではないだろうかと、いまから気をもんでいます。みなさんの会社では、そうならない自信がありますか?