会社のレベルと、問題の感度

様々な会社を訪問していると、業種業態にかかわらず、ある特徴から会社の状態を推し量ることができることに気づきます。

例えば、社内の問題に対する「感度」です。成長性が高く勢いを感じる会社ほど、社内に内在する問題に対する感度が高いようです。様々な改善点に日頃から気づき、それらに対処しようと考える。こうした流れが常にあります。問題があるのはある意味フツウのこと、問題がないなんてありえない、早く発見して早く対処すべし。そういう考え方をしています。そのためか、社内の雰囲気は明るいけれど、常によい緊張感がある。そんな印象です。

逆に、勢いがない会社ほど、問題に対する感度が低いように感じられます。社内には多くの問題が存在し、それは第三者の視点ではかなり目立つものであることも多いのですが、それとなく水を向ける程度だと「特に問題とは思っていない」という回答が返ってきたりします。そのためか、社内にはどこかのんびりした空気が流れている。そんな印象です。

問題山積の会社ほど目が回るほどに忙殺されているかと思いきや、そういう会社ほどのんびりした雰囲気に包まれている、というのは、ずいぶん皮肉なものだと思います。

そうなってしまうのは、会社において「何を問題とみなすのか」という基準の厳しさに差があるからでしょう。厳しさに差がある、とはつまり、その会社が達成したいクオリティやレベルの違いです。ひいては、その会社のミッションやビジョンの位置づけの違いということになります。問題の感度が低い会社には、そもそも明確なミッションやビジョンが定義されていないことも多いものです。

言葉を変えれば、その会社にとっての「当たり前」が何なのか、それをいかに社内で固く共有しているか、この差であるとも言えるでしょう。世間で凄い会社と言われるところは大抵、現場の業務を個別に観察するとおよそ「やって当然」の仕事をこなしているように見えて、その当たり前の仕事をこなす「レベル」が普通ではないのです。

よく言われることではありますが、問題を解決するスキルは重要だけれど、もっと重要なのは、問題を設定するスキルです。間違った事柄を問題として捉えれば、どれほど正しく問題を解いたとしても、出てくる答えはやはり間違いです。データ分析の世界には、”Garbage in, garbage out.” という戒めの言葉があります。厳しい言い方ですが、「ごみを入力したら、出力はごみ」という意味です。

このようなことから、問題に気づき設定する役割にあるマネジメント層の能力というのは、非常に重要だと感じます。