自分の会社の実力について、一流とまでは思わないが少なくとも平均以上ではあるだろう、と思っている人は多いようです。
わたしは仕事柄、少なくない企業の業務の実態を観察していますので、拝見すればどの程度のレベルなのかは判断がつきますが、過去には「ウチはそれほどレベルが低いとは思っていない」とはっきりおっしゃる方もいました。
しかしながら、私見では多くの方々の自己評価はおおむね「甘い」と言わざるを得ません。世の中の会社の半分は「平均以下」であるという真理を、一度認識することが必要だと思います。
何らかの根拠をもって「ウチは十分イケている」とおっしゃるなら、問題はありません。もし根拠になるものを持ち合わせていないなら、ほかの会社の仕事ぶりを積極的に観察しに行くことをお勧めします。
経営者であれば、いろいろなツテをお持ちだろうと思います。訪問したいと思えば多くの機会があるでしょう。業種業態をえり好みせずに、多くの企業の業務をご覧になるとよいと思います。
会社訪問のほかにも、経営者がほかの会社を観察する方法はあるでしょう。自分が動きさえすれば、あらゆる機会において、ほかの会社の実力をうかがい知ることができるはずです。
たとえば、株主総会などもそうです。
株主総会では、その会社のトップが議長を務めて議事を進行していきますが、その会社の実力がうかがい知れるのは、質疑応答の時間です。多くの株主から、様々な関心ごとについて質問が投げかけられます。
その会社の実力が見えるのは、その受け答えです。質問の内容によって誰が回答者として登壇してくるか。想定問答に従って通り一遍の言葉をいわば「読上げ」しているだけなのか。的確な理解のもとにわかりやすい言葉で回答しているのか。厳しい質問にどう答えるか。議長は補足説明などにどう対応するか。
優れた企業は、延々と投資家の質問を受け続け、どの回答もレベルが高い。それに加えて議長が的確な補足をすると、トップの実力が高いことまで理解できます。
ある金融系の企業では、ブロックチェーンに関する質問を受けて、担当役員が回答した後、議長であるCEOが補足で、事業面と技術面から極めて的確な説明を行いました(もちろんカンペなどありません)。表面的な理解では決してできない説明をしたのは、すぐにわかりました。そういう受け答えを聞くと、この会社はしばらく問題ないなと納得するものです。
会社訪問に行ったとしても、ただ案内されたものを見て感心しておしまい、では何も見抜けません。その会社の業務について、またその会社を支える仕組みについて、どれだけ関心があるかが問われます。関心があれば、ほかの会社の実力、さらには自社の真の実力も、見えてくると思います。