大きな企業のCIOが、講演やインタビューなどさまざまなところで発言しています。これまでわたしも、たびたび参考にさせていただいてきました。
最近、そうしたCIOの発言を聞いていて、気になり始めたことがあります。CIOの根底にある志向が、どうも二極化しているように感じられるのです。
この傾向は、クラウドが流行り始めてから顕著になってきたような気がしています。
わたしが気になっている2つの極、そのうちのひとつは、ビジネスのあり方を起点に施策を決めようとする志向です。
この志向を持つCIOの話は、必ずと言っていいほど、自社のビジネス展開が基軸になっています。ビジネスはこれからどうなっていくべきなのか。どんなビジネスをしたいのか。そのために必要な業務のあり方は。いまの業務プロセスは理想とどのくらい離れているのか。こうしたことがまず念頭にあって、そこからシステムの話が出てきます。
このようなCIOに、あなたの会社のコア・ノンコアは何か?と問いかければ、自社のビジネスモデルを踏まえたコア業務・ノンコア業務を回答します。
一方、もうひとつの極。それは、IT部門や情報システムを起点に施策を決めようとする志向です。
この志向を持つCIOの話には、必ずと言っていいほど、早い段階でコストの話が出てきます。次に多いのが、システムの柔軟性の話。もちろん「柔軟性がない」という話なのですが。システムが複雑になってきた、という話も多くあります。
そこから展開されて、いま取り組んでいるなかで “ちょっと自慢できる” システムの話が出てきます。最近で言えば、「クラウドに全面移行した」「BIツールを採用して使っている」といったようなことです。
このようなCIOに、あなたの会社のコア・ノンコアは何か?と問いかければ、IT部門のなかの業務や既存システムのノード(”○○システム”と名がつくようなもの)から、コア・ノンコアを分類しようとします。ビジネスモデルの話は、この志向を持つCIOの話にはまず出てきません。
推察するに、これは「普段の関心がどこにあるのか」に左右されているところが大きいのでしょう。
CEOや、自ら以外の幹部役員とどのような会話をし、周囲からどのような期待とプレッシャーを感じ、自らの活動領域はどこで、どのようなアウトプットが重要と考えているのか。こうした意識が、取材などにおいても出てくるものと想像されます。
昨今では「ビジネスにいかにITを貢献させるか」が、CIOクラスの一大テーマになっているのは、多くの方がご承知のとおりです。この問いかけに対し、CIOがどの志向をもっているかで、取り組む方向性はまったく異なる気がしてなりません。
「ビジネスへの貢献」を要求されて、ビジネスモデルのさらなるアップグレードを目指すのか。または、さらなるコスト削減と効率化の余地を探すのか。「ビジネスへの貢献」と聞いて、顧客を思い浮かべるのか、情報システムを思い浮かべるのか。
その結果は、短期的にはどちらも好ましいものにはなるかもしれません。しかし、会社が必要とするCIOとは、本来どうあるべきなのでしょうか。経営者の方々には、どちらの志向を持つCIOがよいのか、一度思いを巡らせていただくことをお奨めしたいと思います。
その答えによっては、CIOに対する接しかたを変えなければならないかもしれません。