最近、集中的に、データ分析のビジネスへの活用について事例研究を行っています。今回と次回のコラムでは、現段階での理解から少しだけ紹介してみようと思います。
データ分析というテーマは、昨今の「ビッグデータ」ブームに乗ってホットなトピックになっています。しかし、現時点では大多数の企業がこれに取り組んでいるという状況でもないことが、各種の統計調査から見えています。例えば、日本情報システムユーザー会(JUAS)が昨年発表した調査結果によれば、ビッグデータ活用を「導入済み」とした企業は、割合にして 4.8% しかいません。一方で、ニーズなしとした企業は 52.9% となっています。
JUASのアンケート調査に回答する企業は、およそIT活用にそれなりの意識を持つ大企業と中堅企業です。それでこの結果ですから、この件に関する日本企業全体のトレンドは推して測れるでしょう。
しかしながら、データ分析活用の事例を探っていくと、相当先進的なものが出てきます。成果はもちろんですが、それを導く分析能力の秀逸さがずば抜けているのです。つまり、データを操れる企業とそうでない企業との間では 「突出した差ができつつある」 ということになります。
データ分析に先進的な企業の特徴は、そもそもデータというものを、ビジネスを発展させるうえでトップ・プライオリティと認識している業種業態であるということです。ほぼこれに尽きる、と考えています。そしてそのほとんどのケースは、金融取引系か、マーケティング重視の企業です。
少々補足しておきますが、もちろん、在庫評価・財務分析などの分野で、従来からデータ分析手法は利用されてきました。しかしながら、この分野で使われる手法はすでにパターンが固まっており、どの企業でも同じことを行っているため、「やっていて当然」のデータ分析です。分析に試行錯誤の必要がない分野での活用は、今回の事例研究の対象から除いて考えています。
マーケティングを重視する企業は、経営層がそれを重視しており、マーケティングをうまくドライブできるような組織を形成しようとしています。結果としてそれが、データを活かしデータを重視する企業文化につながっているようです。結果として、分析に長けた人材が集まり、マーケターと組んで試行錯誤を繰り返す取り組みが、日常の業務として当たり前に行われています。そしてそこに、リソースの投資が行われているということです。
ただし、こういう企業の絶対数は、とても少ないのが現状です。
一方、ほとんどの企業は、データ分析をビジネスをドライブするうえでそれほど重要とは見ていない、または少なくとも過去においては重要と見ていなかった企業です。
その中で成功例と言える企業には、パターンが2つあります。(後篇に続く)