「昭和な会社」と、経営者の「コミット」

先日の日経ビジネス誌で、「昭和な会社」と題して、一見では時代に逆行しているかに見える、ユニークなIT活用をしている企業を取り上げた特集が掲載されていました

例えば、こんな企業が紹介されていました。

  • スマホを使わない社員に奨励金を支給する会社
  • 社員からパソコンを取り上げた会社
  • 朝にパソコンの電源が入らないようにした会社

情報システムにかかわる仕事をしているわたしが申し上げると奇異に聞こえるのかわかりませんが、わたしはこれらの事例を見て、大変よい取り組みをされている企業だと感じました。実はわたし自身も、5年ほど前に、あるサイトへの連載で、このような取り組みをしている企業を取り上げたコラムを書いたことがあります。

大変よいと感じる理由には、いくつかあります。

まずひとつ目に、IT活用を考えるうえでの検討の流れが正しいことです。つまり、「業務のありかた」が先に来て、そのあとにITの使いどころを考えようとしている、ということです。取り組みを紹介されたどの企業においても、変えるきっかけは「業務のありかた」でした。この順番で考えられているなら、いわゆる「ITありき」にはまずなりません。これらの事例のように、「そこはITじゃないね」という結論も、自然に出せるわけです。

ふたつ目に、「なぜその取り組みなのか」ということに対して、ポリシーが明確であることです。なんとなくで目的はあまりない、単にコストを削減したい、などということがありません。あるべき姿を明確にイメージしたうえで行動を起こしている点は、成功に必須な要素を踏まえていると見えます。

最後に、事例に出てきたどの企業においても、そうした取り組みを経営者自身が主導し、その対応についてコミットしていることです。

事例に出ている企業の経営者の姿を見ていると、IT活用において経営者が持つべきマインドセットは何かが、垣間見えると思います。ITに詳しい必要などありません。IT技術者をいいように操れるだけの論陣を張れる必要もありません。必要なのは、顧客に対する価値提供のありかたや、そのためにあるべき業務環境のイメージ、価値を提供するためのしくみの理想像、そういったものなのです。

経営者がコミットする、とはよく言いますが、これらの事例ではまさに、それぞれの経営者が「コミットしている」姿を体現していると感じます。そこに、この事例から読み取るべき本質があるのではないかと思います。