サムスンの強さを感じ取るなら、この切り口で見たい(2011年9月)

先日、ITmedia でサムスン電子の IT 活用に関する事例が紹介されて いました。

ITmedia エグゼクティブ:『韓国企業の強さの秘密は「情報」重視の経営』

サムスン電子の決断の速さは情報活用にある、という内容で、ぜひ一読 いただきたいところです。

ただし、「どういう IT を導入しているか」という視点で読んでほしくは ありません。実はこの記事は、私のようなシステムデザインの専門家の目 から見ると、あまり目新しい内容ではありません。

例えば、同社の IT 活用の具体的施策として、サプライチェーンにおける キー情報を集約したダッシュボードの導入、それに伴う全社レベルでの チェンジ・マネジメントの実行などが取り上げられています。 これらの施策は、日本の大手製造業でもすでに取り組まれていることです。 一例を挙げれば、シャープで経営層向けに導入されている経営コックピット ・システムは、直感的な操作で最新データを簡単にドリルダウン分析できる 手法を取り入れていることで有名です。

しかし一点、一般的な日本企業にはあまりない部分を私は感じました。 それは、「経営によるトップダウンに対するこだわりの高さ」です。

いかに厳しく対応しているかは記事を参照していただくとして、それほど まで行うあたり、経営陣がどれほど情報集約を重要視しているかの表れ でしょう。

私自身これまで経営者から直接さまざまなお話をうかがってきた中で、 日本の経営者は“良くも悪くも”担当者を信頼し任せる傾向があると感じて います。信頼するのは大事ですが、「任せる」と「放任する」の区別は つけなければなりません。その区別をつけるカギとなるのが「ファクト・ ベース」という視点です。

時に、非凡とは平凡な事柄を他人ができない領域まで行うことである、 と言われます。私にはサムスンの経営陣が、「ファクトがなければ判断 できない」という、言葉にしてしまえば当たり前のことを、忠実にかつ 徹底的に実践しようとしているように見えます。

この事例からサムスン電子の勢いの秘訣を吸い取るなら、この「ファクト・ ベース」という視点で捉えると、良い学びがあるのではないでしょうか。