成果を出すビジネスリーダーは「4つの力」を発揮する

年の初めに目標を設定しようと思う経営者やビジネスパーソンは、案外多いかもしれません。

個人的に目指すところを目標設定する場合は、個人の好みでまったく結構でしょう。一方、ビジネスの目標、ことリーダークラスの方々が設定する目標となると、周囲を巻き込む必要がありますから、自分の好みでよいとは行きません。

昨年中、様々な支援先で、経営者のみならず部門レベルの方々などにも、「目標を設定して」という働きかけをしました。そうすると、言葉を絞り出して何か出てくるのですが、こちらが見た瞬間に「これは目標になっていない」と思うものが多くあったのには、いささか驚きました。そう指摘すると、さらに悩みだしてしまう。そんなケースが想像以上にたくさんありました。

リーダーが設定する目標は、言うまでもなく重要です。それで部下全員が動くわけです。下手な目標を設定すれば、そもそも理解してもらえず面従腹背になるか、なんとなく達成したようで達成感は感じられないか、達成できても意味を成したように思えないか、そんなふうになります。

目標を設定しようとするとき、リーダーが発揮しなければならない能力がいくつかあると、わたしは思います。それらがないと、周囲がついてきてくれるような目標設定は難しいでしょう。

まずは、予見する力。社内および社外の環境を的確に感じ取り、自分が責任を持つビジネスドメインの全体感が俯瞰して把握できていること、そのうえでこのまま行ったらどうなるかを想像できることです。それができて始めて、的確に課題を認識できます。課題認識がないなら、もっとこうしたい、もっと良くしたい、という発想も浮かぶはずがありません。

次に、構想する力。どうすればよくなるのか、どのように課題を解決してよい方向に持っていけるのか、というシナリオを描けることです。シナリオを描く重要性は、このコラムでたびたび申し上げています。こうすれば成功できるというシナリオと、それに加えてどこにリスクがありどう回避できるかというシナリオ。それらがなければ、混とんとした状況の中で目標に向かう適切な行動を示すことができません。目標だけ示してシナリオがないというリーダーをよく見かけますが、まるで山の頂上だけ示して登山ルートを設定せず、さあ勝手に登れ、と指令しているようなものです。

もうひとつは、共感を生み出す力。その目標を示して、目指す意義をわかってもらえる説得力を示すことです。こと経営者なら、大きな会社にしたいなら余程、その目標は社会的に意義を成すような、公明正大な目標でないと、現実に成功はしないと思います。また、周囲を説得するにあたり、自らの言葉を文字に起こし、それを語れることは必須です。演説が巧みなことと、文字や図式で表現することは、別の能力です。しかし、両方ともないとまずいです。見ていると、口は達者だけれど文字や図にはできないリーダーが相当に多いように思います。

そして当然ながら、最終的には実践する力。目標だけ語って、あとは現場に投げっぱなしはいけません。実行責任と権限は現場に与えるが、その結果は確実に追う。現場に問題があるなら道を示して支援する。そうすれば、自ずと目標達成に近づきます。

こうしたことは、どれだけリーダー研修を受けようが、本を読んで勉強しようが、身に付くことではないように思われます。下手でもいいからまずやってみて、だんだん磨かれる能力ではないでしょうか。面倒でもまずは型をまねてやってみる、板につくまで粘って続ける、という態度が重要かと思います。

かくいうわたしも、上記のようなことを創業時に思い立ち、考えを文字に起こす練習として自ら毎月コラムを書くことを義務にしてから、かれこれ今年で17年になります。上手くなった気はしていませんが。