2020年は異例尽くしの1年になりました。そして、2021年もその流れは続きそうな雰囲気があります。毎年、いつもなら年頭は前向きな気持ちで始めていきたいところですが、今年はなかなかそんな気分になりにくい向きもあるような気がしています。
こんなときこそ、あるべき姿を改めて問い直す年頭にしてはいかがでしょうか。
先の見えない状況では、どうしても目の前の課題にフォーカスが向き、次々とそれらを片付けていく格好になりやすいものです。しかしながら、それに任せて誰も全体感を把握していないと、知らぬ間にあらぬ方向に舵を切りやすいものです。気づいたときには、自らの立ち位置を見失い、必要なことと必要でないことの区別も付けられなくなっていきます。
ビジネスというのは、売れてナンボであることは間違いありません。ただし、売れるためには世間に価値をもたらさなければならないことも、また事実です。なんのためにその事業を推進するのか。なんの価値を世間に提供しようとしているのか。結局はそうした社会的意義を常に持ち続けていることが、苦境の時代において唯一の道標になるものだと、わたしは考えます。
ITの分野においては、近年では多様なツールやソリューションが出回り、利用しやすい状態になっています。昨年もまた、RPA、クラウドAI、IoTソリューション、ローコード/ノーコード開発など、すぐに使えて便利なITが多く採用されていました。
しかし、そうしたツールを表面的に使い回すだけでは、本当の意味でのデジタル化にはなりません。ここ最近の企業事例を見るにつけ、わたしには、単にツールを使っているだけの企業と、ビジネスや業務の全体構造を見据えてグランドデザインし、そのうえで適所にツールを適用する企業とで、くっきりと分かれてきているような実感を持っています。
前者のような企業は、目の前の課題への解決しか見えていないでしょう。そうした取り組みは、いつか全体感を失い、ビジネスとして動きが鈍くなるフェーズがやってくるだろうと想像します。
あるべき姿を常に見据え、この先もぶれない進め方をしていくためにも、一度立ち止まってグランドデザインを考えるには、この時期はいい機会かもしれません。
また同時に、流行や雰囲気に流され過ぎないことです。DXという言葉がよく強調されていますが、これは概念としては重要です。ただし、この概念自体は、わたしが当社を創業した時から申し上げていることであり、かつ当社が創業されるよりもっと前から先人が教訓として述べていたことです。
いま「DX先進企業」と呼ばれる企業はDXなどという言葉がない頃から取り組んでいるからいま成功している、という事実を思い返してください。そしてそもそも、「DX」と称しているのは、わたしの知る限りでは世界の中でも日本人だけです。digital transformation という言葉は欧米でも使われていますが、特別な意味合いを持たせてバズワードのように使われている印象はありません。
その本質を見極めれば、それとは異なる表面的なポジショントークや売込みを見抜くことは容易になります。
苦境にある業種業態の企業も多いことと思います。しかし一方で、さまざまなアイデアや工夫を繰り出して元気に乗り切ろうとする企業もあります。元気な企業を見習って、今年良い兆しが見えるようになることを期待しましょう。