年の始めから頭の痛い話で恐縮ですが、経営に要求される能力は年を追うごとに幅が広がり、かつ知恵の深さも必要になってきていると感じます。わたしが専門とする情報システムの領域だけで見ても、最近では「AI」「IoT」「標的型攻撃」「○○Tech」「マイクロサービス」など、その奥行きは相当なものです。
言うまでもなく、経営者が関与すべきことは多岐にわたります。一人ですべてを知り尽くし判断ができるなら、それがベストであろうと思いますが、それはほとんどの経営者にとって無理でしょう。そうした知見を補うために、何らかの形で「参謀」を置くのは、いまや必須と思います。
自らのそばに参謀を置くときに、経営者の方々に間違ってほしくないことがあります。それは、「参謀に依存しない」ということです。
べつに禅問答ではありません。参謀に依頼するからといって、自らの頭脳まで参謀に預けてしまってはいけないということです。
参謀は、経営者が知らない知見や、キャッチアップが困難な情報を、経営者に授けてくれます。ただしそれは、参謀の「個人的所見」に過ぎません。経営者は、参謀の所見を聞き、内容を理解した後に、「議論する」ことを放棄してはならないと思います。参謀は、単なるシンクタンクではありませんし、そうあってはなりません。参謀の役割とは、知見を提供するのみならず、経営者と議論を深めることで、経営者のよりよい判断に貢献することなのです。
これを明確に意識していない経営者のとる行動は、次のうちのどちらか - 参謀の意見を丸呑みするか、参謀の意見を完全無視するか、です。
前者の場合、およそそうした経営者は、自らの知らないことに関しては表面的なことしか気にしません。「ビッグデータとは何だ」「ほかの会社はやっているのか」などと参謀に質問し、事例を答えると「ウチも検討しろ」と言います。本質の理解に乏しいその方針は自らの魂が宿ったことばにはなりませんので、社員に伝わりません。こうして判断された方針では、不思議なくらいに実行のパフォーマンスが上がらないものです。たかが方針、読めば(聞けば)わかるだろうと思いたくなりますが、リーダーの気持ちが方針に乗っているかどうかという部分は、測れないことですが重要なカギを握っていると思います。
後者の場合、およそこうした経営者は、新しい考えや新しい動きを、くだらないもの、自らとは関係ないもの、などと見なそうとします。面倒を押してでも新しい知識を自分のものにしようとはしないため、参謀の進言に耐えることができません。無視するということは、その根底には、感情的な拒否反応があろうかと思います。
ときに、経営者の認識よりも参謀の認識のほうが正しいことがあります。こうした状況では、経営者は自らの意見を曲げられなければいけないのですが、これは特にトップにとってはなかなか難しいことではないでしょうか。それを自然なかたちで可能にするのは、経営者が参謀の意見をリスペクトし、そのうえでの建設的な議論を通してではないかと思います。
そして議論をしようと思えば、そこには自らの知識と意見が必要になるわけです。
こうしたことに留意いただきつつ、参謀を自らのそばに置き、それでいて頭脳は預けず、その能力をうまく引き出すように、取り扱っていただきたいと願う次第です。