過酷な条件で従業員を労働させていたとして、アルバイトが大量離反するなど問題になったゼンショーホールディングス。問題発覚後、同社は第三者委員会を設置、7月末に調査報告書が同社に提出されました。
その報告書によって現場の厳しい労働実態が明らかになったのは周知のとおりですが、合わせて、トップレベルでの管理体制にも、問題の焦点が向けられています。
報告書によれば、現場からの勤務実態の報告や、退職者が続出している状況は、事業部門レベルでは把握していたようです。しかしこうした情報は、取締役レベルにはまったく上がらない状況だったとされています。
同社には社外取締役が置かれていました。本来、社外取締役は、専門的な知見や経験を活かし、外部の視点で会社の運営に貢献するのが役割です。社外取締役には、内部の人間が悪しき環境に慣れきって麻痺してしまっている場面でモノ申す役割が期待されます。しかしながら同社では前記のような状況だったため、社外取締役もこうした情報を把握できなかったということです。つまり、「外部の目も利かない」状態でした。
このような事態が明らかになると、その企業における「仕組みに対するこだわりの浅さ」が、残念ながら見えてしまいます。
社外取締役の設置は、ここ最近では一種のブームになっているようで、多くの企業が設置を検討し、実際に設置しています。外部の目を置くことは大いに有効でしょう。また、2015年4月に施行予定の改正会社法では、選任しない大企業には株主総会でその理由の説明を義務づけています。事実上義務付けられることから、今後もこのトレンドは続くと思われます。
どなたかとのお付き合いの都合だとか、もしくは株主向けに見た目がよいなどの理由なら話にもなりませんが、本来、社外取締役を置くのだとしたら、そこには目的がなければなりません。社外取締役は、その目的のもと、社内でなんらかの役割と働きを占めるはずです。そして彼らに期待される役割と働きがあるのであれば、それはなんらかの仕組みの一端をなしているはずです。
そうした仕組みのないところに、ただポストだけを置いたところで、意味を成すはずがありません。
社外取締役に外部専門家の視点と役割を期待するとしましょう。それなら、彼らによいアウトプットを出してもらうために、どうやって彼らにインプットするのかを考える必要があります。彼らの知見を効果的に引き出すには、適切な情報が必要です。そのためには、社内の取り組みや状況が明確に伝わるような仕組みを用意し、鮮度の高い情報が抜かりなく共有可能な状態が要求されます。さらに言えば、社外取締役が発したフィードバックを現場にインプットし、具体的な対応をモニタする仕組みも重要です。
これらができてはじめて、ご参画願うことができるのではないでしょうか。
ゼンショーの事例を聞くと、社外取締役設置の目的にかなう仕組みを整えることなく、単に任命して取締役会への出席をお願いしただけに過ぎなかったのではないかと思えてなりません。
およそ強い企業とは、所作のすべてに意味があり、なぜかを問えば「そこまで考えているとはすごい」と言われるほどの回答をする企業ではないでしょうか。どの世界においても、およそ優れたプロフェッショナルにはそのような特性があるように感じます。