今年最初のコラムは、特にクラウドを中心とした展望について私見を述べさせていただくことにします。
昨年末に発表された IDC によるトレンド予測では、国内のIT市場は成長分野と縮小分野がはっきりする傾向にあるとされています。
その中で成長分野と位置付けられているのが、「第3のプラットフォーム」と呼ばれる、クラウド、モバイル、ビッグデータ、ソーシャルの分野です。
確かに業界的にはそのとおりだろうと感じますが、システムユーザー企業の立場でこれらを見たときには、分野ごとに印象が分かれるのではないでしょうか。
たとえば、ビッグデータは必要性を感じる企業とそうでない企業の温度差がより顕著になるでしょう。またソーシャルは、マーケティング用途で工夫を凝らす企業はさらに取り組みを深めるでしょうが、そうした企業の数が急激に増加することはもうないように感じます。
一方で、企業の IT インフラに組み込まれてきた感があるのが、クラウドとモバイルです。
実は、クラウドを利用する企業が急激に増えているかというと、そうでもありません。それでも業界は活性化し、結果的にクラウド業界は大手・中堅・ベンチャーが入り乱れてサービスが乱発されている、いわゆる「安定成長期」の傾向を見せています。
ただし、統計データをよく見ると、市場の売上高の大半を占めているのは「プライベートクラウド」です。プライベートクラウドの定義は相変わらず微妙で、ユーザー企業が自社システムをベンダーのDCに預けるという、これまでも存在した形態も「プライベートクラウド」と呼ばれているケースが往々にしてあります。それに比べ、「パブリック」と「SaaS」を合わせた市場規模は「プライベート」の半分以下、市場全体の3割程度しかありません。
そんな中で、最大手のアマゾンウェブサービスなどは頻繁に値下げを繰り返していますが、一方で値上げをする業者も出始めました。
たとえば、サイボウズがkintoneの料金体系を変更、一部を値上げを発表しました。現行は1ユーザー当たり月額880円(税抜き)でフル機能を使える料金体系のみでしたが、2014年4月以降は1ユーザー当たり月額780円で機能制限がある「Light」プランと、月額1500円でフル機能を使える「Standard」プランの2つの料金体系に改めるとしています。廉価版と高機能版に分けたと説明していますが、使い慣れたユーザーが今後より高機能なものを要求することを見据えた、実質的な値上げに映ることは否定できません。
また、クラウドストレージのSugarSyncは、無料プランを廃止し、2月8日から完全有料制に移行すると発表しています。声明では「すでに底堅い財務ポジションがある」と主張していますが、それなら無料プランを継続できるはずです。企業向けでも使えるプランも用意していますが、フリーミアムでは成り立たなくなってきたのではないでしょうか。
こうした傾向を見ると、そろそろクラウド業界も、安定成長期の後半に入り、業者の淘汰の時代が始まったのではないかと感じてなりません。
そうなると、ユーザーにはこれまで以上に「見る目」が要求されることになります。実際、突然にサービス停止を発表する業者も出てきています。
「見る目」を鍛えるには、まずユーザー企業みずからが、システムやITをいかに使いこなすのか、どのようなシナリオでビジネスの加速化につなげるのか、ポリシーを明確に持たなければなりません。そのポリシーが、目利きの軸になるのです。2014年はますます、user-driven な企業とそうでない企業の実力差が拡大する年になるのではないかと、わたしは感じています。