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ICTで「攻める」時代の方法論
当社代表・田代博幸が、ICTを活用した「攻め」の経営戦略に必要な思考法を、最先端事例や最新動向を踏まえて解き明かします。





第49回 iPadと企業システムの相性

 ご存知のように、iPadが注目の的です。間違いなく、今年のヒット商品のひとつに数えられることでしょう。Apple社の戦略のうまさも光ります。
 
 世間が注目するように、企業でもiPadに注目する動きがあります。その操作性から、確かに使い方によっては有望に見えます。今回はそんなiPadと企業システムについて考察しながら、システムへの取り込み方について提言してみたいと思います。
 
●企業も熱い視線

 iPadに企業が注目している話は、最近いくらか聞かれるようになってきました。すでに導入している企業もあるようです。
   
 例えば、みずほ銀行では、顧客への商品説明用端末として使えないか、試験導入しています。従来は、情報を調べるためにその都度店の奥まで行っていたそうです。iPadがあれば、その場で情報を引き出して顧客に説明ができます。
   
 また、中古車販売のガリバーインターナショナルでも、店頭でiPadを試用しています。同社では、商品である中古車の検索や閲覧をするうえで画像の拡大や縮小の用途が多い特徴がありますが、iPadの操作性はこれに適しています。同社によるiPadの評価は高いようで、これから顧客の反応を見ながら活用方法を検討していくようです。
   
 (上記2社の事例は、いずれもITproより)
   
 こうして見ていくと、今のところは「接客系」業務のなかで「顧客に見せる用途」が中心になっているようです。
   
●結局、企業で使えそうなのか

 広がる兆しも感じられるiPadの企業利用。個人利用なら非常に興味深いものの、果たして企業でもそのまま使えるガジェットなのでしょうか。

 どうやら、上記の事例のように「見せる」用途なら、使い勝手に問題はなさそうです。顧客を引き付ける要素にもなりますから、例えば外食産業ならメニュー代わりにすると話題になるでしょうし、アパレル系企業の店頭利用などでも有益な端末だと思います。

 一方で、「見せる」以上の機能を求め始めると、いろいろ課題が見えてきます。特に、入力が伴う場合は注意が必要ではないでしょうか。
 
 iPadには一応ソフトキーボードが標準装備されてはいますが、決して打ちやすいとは言えないでしょう。「慣れれば問題ない」という向きもありますが、企業システムにおいて利用者に「慣れろ」と言うのは、あまり簡単なことではありません。別売りで外付けキーボードが販売されてはいますが、それを使うとなると、ウリであるタッチパネルの魅力が結局半減以下になってしまいます。ノートPCと何が違うのか、という話にもなりかねません。
 
 それなら、ペン入力や音声入力があるではないか、とも考えられます。確かに、iPadでそれらの機能を実現することは可能です。しかし、企業利用ともなると、文字認識に精度・変換スピードが要求されます。また、変換機能も一般的にはまだ完ぺきではないため、システムとしては変換できなかった文字の扱いにも考慮が必要です。例えば、漢字の「口」とカタカナの「ロ」、漢数字の「一」とハイフンなどは、文字認識を間違えやすい事例です。これらの修正を業務上やりやすくできるかと同時に、間違った文字認識をそのまま取り扱わないようにするフールプルーフも重要になってきます。
 
 さらに、業務用途ともなるとアプリがApp Storeには置いていない可能性が高くなります。そうなると、ソフトの特別なつくり込みが避けられなくなります。例えば、小売店の店頭で贈答品申し込みに使いたいとなれば、かなり高い確率でその企業向けのアプリが必要になるでしょう。
 
 そして、そのアプリをどう配布するのかにも課題が出てきそうです。App Storeにアプリが置かれないとなると、配布はPC経由しかありません。そうなると、アプリ配布が一度だけだったとしても、台数によっては相当工数がかかります。もしアプリのバージョンアップが必要となるなら、PCに繋がずに更新できるつくり込み(例えば、メール送信でアプリ更新する仕組み)をしておかなければ実用に堪えません。それはそれで、例えばWindowsのタブレットPCを採用する以上のコストが発生する可能性が高くなります。
 
●iPadの「工夫」に注目する

 ほかにも、業務上の操作性や画面の見せ方などにこだわり始めると、またいろいろと課題が出てくるかもしれません。
 
 企業向けのITには、必ずと言っていいほど何らかのトレードオフがあります。業者の言っている通りにいいことばかりはない、と思ったほうが安全です。このあたりが、コンシューマ系のIT製品を買うところと少し勝手が違うところです。
 
 iPadにしても、ご多分に漏れずに同じ考え方をしたほうがよいでしょう。iPadをきっかけにして自社の入力端末の改善を考えるのはよいことです。しかしながら、iPadありきで考えるのは、「ITありきで考えるな」という話と同じく、失敗のもとです。
 
 ただ、iPadに限らずiPhone等も同様ですが、Apple社の製品は操作性のみならず、ユーザーへの「見せ方」が上手だと、私は感じています。おそらく、ソフトウェアの動作速度はそれほど高速ではありません。それでも、ユーザーのアクションに対して何かすぐに反応してみせるようにし、それが洗練された印象を与えるものになっていることで、「遅い」と感じさせません。このように随所にみられる工夫を解き明かし、アイデアの源泉にして、システム企画に反映していく考え方もあると思います。
 
 iPadの最大の魅力は、やはり人を虜にするデザイン性ではないでしょうか。多くの顧客を相手にする企業において、システム上の欠点は顧客サービスのうえで致命傷になりかねないリスクがありますが、何にしても「惚れて」しまうと、少々の欠点なら目をつぶることにしてしまいがちです。まずは、「どうあるべきか」を踏まえた用意周到なシステム企画が重要ですが、さらに利用者に気に入られる企画術を身につけると、鬼に金棒かもしれません。
 

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